2013年3月27日水曜日

中国人富裕層が海外移民に走る理由

Week in China に「The visa run」という記事がありました。
中国人富裕層が、ついに国を捨て海外移住に走っている、という内容です。
このブログでは、すでに紹介していますが、公開メディアに掲載されるというのは、なかなかありません。
以下、簡約です。


1857年1月、南オーストラリアの浜辺(Robeという町)で、ある騒動があったことが記録されています。それによると、当時、その町の銀行で働いていた男性が、「すべて中国人の男だ。全員、月と見分けがつかない平らな顔と、豚の尻尾のようなおさげを下げている!」と書き残しています。

Robeは、中国人満載の客船を歓迎しませんでした。
当地で起きていたゴールドラッシュにあやかろうとやってきていた中国人労働者の移民を阻止するために、近隣の職員は、35日間におよぶ香港からの渡航費よりも高い、入国税を徴収しました。
そこで中国人は、課税を避けるために、250マイル先のBendigoとBallaratに上陸しました。

昨今の中国人移民は、オーストラリア永住権へ、高速トラックアクセスを約束されているようなものです。レッドカーペット待遇とまではいきませんが、移住者としては別の種類扱いになっています。自らの運命を切り開けるのであれば、オーストラリアに投資することなど、安いものです。

他の国々も歩調を合わせて、中国人移民を誘い出すことが広く行われています。

中国人富裕層は、毒性のスモッグ、毒が流れる河川、汚染された食物にうんざりして、海外に委譲したいと訴えます。そして、彼らが投資する財産目当てに、先進国は移民誘致競争をしています。


どんな投資ビザがあるのか?

多くの政府は、指定された金額を投資すれば、国籍を問わず、それぞれの国に住み、働く権利を認めています。ほとんどの場合、一定期間を過ぎると永住権を獲得できます。

二重国籍は、中国の法律では違法であるため、居住権は、ほとんどの中国人にとっては理想的なオプションです。ビジネスパーソンにとって、自国でビジネス活動をする権利を審判せずに、市民権を保持することが許される永住権が最適です。

ビザプログラムは2つグループに分けることができます。
ひとつは主にヨーロッパで提供されている、不動産にフォーカスしたものです。
ポルトガルでは、不動産に40万ユーロ投資したい人なら誰でも、居住証明書が交付されます。たとえば、アイルインドでは50万ユーロを投資した人すべてに居住権が与えられます。キプロスでは30万ユーロ以上、不動産バブル崩壊で最も苦しんでいるスペインでは、最も安い16万ユーロを検討しています。

これらは、ビザ付きの不動産投げ売りのようなスキームを作り出しています。
香港のビザ・エージェンシー社長のWinner Xingは、今年中にヨーロッパ各国は、更なる値下げをしてくるだろうと予測しています。「2013年を振りかえったとき、海外移住の年、と記憶されるでしょう」。

すでにキプロスの不動産業者は、中国人ビジネスに依存しているとの報告もあります。
英国新聞「ガーディアン」が2月に報じたところによると、1月の不動産売買は対前年比53%、今年はかつてないほどに悪い年になると示唆しています。しかし何百人もの中国人バイヤーは、ほんの数少ない明るい話題となっていて、中国人デベロッパーが、住宅建設のために列をなしているという憶測もあります。

その他の国々では、異なる取組、地元企業に投資することを提案するなど、をしています。
英国は100万ポンド、シンガポールは100万シンガポールドル以上の投資を要求しています。
ニュージーランドでは2つの仕組みがあります。一つは、英語テストと150万ニュージーランドドルの投資。もう一つは、英語テスト無しで1000万ニュージーランドドルの投資です。
米国EB-5プログラムは、少なくとも新規事業で100万ドル投資するか、高失業率地域において既存事業へ50万ドルを投資した者にビザを提供しており、年間1万人を超えています。この投資では、少なくとも10人の労働者を2年間雇用しなければなりません。

オーストラリアでは、昨年11月に、Significant Investor Visa (SIV)が発行され、不動産を買っただけではビザを与えないことになりました。
中国人が在留資格と得たいなら、オーストラリアに拠点を置く民間企業、国債または国内の投資ファンドに投資しなければなりません。

キャンペラの政策では、むしろ、不動産セクターを下支えするよりも、中国との深い取引関係のほうが、ビジネスと雇用を生み出すとしています。これが、オーストラリアにとって、中国の成長ストーリーとつながる、一つの方法だと言う人もいます。

そのプログラムでは、年齢制限なし、英語が話せなくても良く、家族全員が居住権を得られるのです。しかし、ヨーロッパに比べれば、最小でも500万オーストリアドルの投資は、かなり高価に見えます。しかし、選挙権を除けば、永住権を取得でき、それによって健康保険制度や教育を受けることも可能となり、法制度によって守られるのです。



どうして中国がターゲットなの?

技術的には、ビザは全ての国籍に適用されています。
中国人が移住希望者の上位にいることがヒントになります。
この制度に興味を持つ裕福な中国人がかなりの数に上っているからです。
しかも、受入国は、彼らに手を差し伸べるよう努力しています。
たとえばキプロスでは、より多くのビジネスをもたらすために、中国人ごのみのお祭り騒ぎになっています。

オーストラリア人は、中国人の本能に訴えかける、実証済みの手段を選んでいます。
「永住ビザのスキームが888で付番されているのは偶然の一致ですか?」
中国人にとって、888は富を象徴する数字ですから、政府が明確にメッセージを送っているとしか考えられません。

オーストラリアでは、早くから投資ビザ制度を使って中国人が移民してきており、全体の60%を占めています。

カナダも似たようなストーリーをたどっています。
それは中国人が、過去3年間で投資移民の75%を占めています。

依然として、中国人にとって最高の移民先は米国で、2011年には、投資プログラムを利用して3,340のビザが出されています。


なぜ中国人は欲しいの?

関連した調査では、彼らは彼らの子供のためのより良い教育、息をするその家族のためのきれいな空気、そして食べるためのより安全な食品を求めるため、と最も多くが回答しています。

多くの海外移住者が、移住するモチベーションを完全に持ち得ているかというと、それは疑問です。
しばしばそれは、資産を海外に移したいということであって、旅行用バッグを送りたい、ということではないのです。

明らかに、ニュージーランド、オーストラリア、カナダのような場所でのライフスタイルは魅力的です。
しかし、中国は新体制になって、資産を安全に国境の外に出せる保証がなくなっています。

言うまでもないことですが、海外居住を希望する人の多くは富裕層であり、これまで説明してきたような事例が、中国のメディアでも頻繁に紹介されています。

先月発表された、the Centre for China & Globalisationとthe Beijing Institute of Technology School of Lawとが共同で行った、100百元以上の個人資産を持つ富裕層を対象とした調査では、27%がすでに外国の永住権を取得しており、47%が検討中であるという。

中国当局は、資産流出は経済成長を妨げる、としています。しかし、過去3年間に、海外の永住権を取得するために流出した資産は、少なくとも150億ドルに上っています。

中国の民間経済は、中国の国内総生産(GDP)の60%以上にあたり、それが労働者の大半を吸収しています。民間企業の所有者が自分の資本で移住する場合、それは国内労働市場の縮小を意味するのです。

もちろん、中国の法律では、一人当たり年間50,000ドルを限度に、外貨の持ち出しを禁止しています。企業の場合、ビジネス目的、たとえば輸入のための支払や、当局が許可した投資などは、この限りではありません。

穴だらけで、大言壮語の資本規制に証拠を提出するのと同じくらい、中国から資金を取り出すことに疑問を呈しています。

他の灰色領域として、投資家が、彼らの富が合法的に得たことを証明することができなければならない規定もありますが、それをどのように取り締まるのかは不明なのです。

投資ビザプログラムの推進役を探している段階の企業は、オーストラリアに到着した段階では、直接自分に関係があるとは思っていません。しかしいずれは、資本が容易に、しかも十分に、中国の国境を越えられる方法を見つけられます。マカオのカジノが証拠です。


London calling?

不動産会社は、すでに海外移住の波のトップに達しています。
Global Entrepreneurは、英国系デベロッパーのBarrattが昨年、北京にオフィスを開設し、2012年の売上の7%が中国人バイヤー向けであったと報告しています。同誌によると、 Barrattは、中国人にもっと英国の住宅を売却することを計画しているのだそうです。

The Berkeley Groupは、2010年に中国市場をターゲットにし始め、これまでに中国人バイヤーにロンドン市内の700件を販売しています。

China Business Timesは、同様の傾向が米国にも見られると指摘します。
Sotheby’s American real estate の幹部によると、3年前は中国人顧客は12%でしたが、昨年は20%に上昇しています。現在では、顧客の1/3が中国人です。
サザビーズの調査によると、購入者の43%が、移民のために購入していると回答しています。


ビザの申し出にもかかわらず・・・?

本誌では以前、中国系ビジネスマンGao Ping逮捕のニュースを取り上げました。
この事件によって、スペインマスコミに中国人禍が巻き起こりました。彼はすでに保釈されており、彼と一緒に逮捕された20人の中国人は、当局によって法的措置を取られています。

しかしこの身柄拘束によって、中国メディアでは辛辣な話題として取り上げられ、スペインに中国資本を移すことを話しづらくなってしまったのです。

The Guangzhou Dailyは、スペイン政府が、「市民権には現金」政策を紹介しているのは、外国の金を吸い取ることが目的であることを、我々は明らかにしなければならない、と警告しています。


受入国は中国人の大挙を歓迎しているのか?

ロイターは、スペインには百万単位の空き物件があると推定しています。理論的には中国人がそれらに飛びつけは、物件価格が高騰する可能性もあるのです。

ビザプログラムにおいて重要なことは、中国からの資本流入であり、人の流入ではありません。
彼らは、移民数を少なくするために、定数を設けたりしているのです。
たとえば、オーストラリア当局は、今年、大幅な投資ビザプログラムのためだけに700件を確保しています。

たとえ投資家ビザが許可された場合であっても、中国人はしばしば永住しないことを選択します。つまり、中国人にとって、永住権は、何か事が起こってぐらぐらしているときの、ボルトの役目をしているのです。それまでは、ビザ取得者は、どこにでも住めるくらいの富をためるために、中国でビジネス活動を行い、中国に住む傾向があります。

受入国もそれを承知していて、新しい住民の最低滞在期間を設けているのです。
ポルトガルでは初年度は7日間、2年目以降は14日間の滞在で十分です。キプロスでは、初年度はわずか1日だけ、2年目以降もたった1週間で良いのです。

オーストラリアの投資ビザの取得者は、永住権が付く前の4年間は、各年40日間と、少し長く滞在する必要があります。しかし、それでも、かつての最小期間よりも大幅に短いのです。

China Business Timesは、100万ドル以上の純資産を所有する者のなかで、270万ドル周辺の者が、次年度以降、海外移住するだろうと予測しています。

逆説的に言えば、中国の富豪は、どこにも行くわけではないことを、断固として明確にしています。WahahaのZong Qinghouは、「私は外国語に慣れていないですし、外国の食べ物に慣れていないので、私は他のどの国にも移住しません。私は中国でビジネスしているし、良い生活を送っているのです」。


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